2007.04.23

郷六産β石英(beta-quartz)

仙台市

 実は車で10分の近所にβ石英の産地が在るので行ってみました。以前から地学関連のHPでレポートされていたのですが、ものぐさな私は何となく面倒で行かなかったのです。何となく気まぐれに出かけた程度の収穫でも大量に採れますし、気になる事柄があるので私もレポートしてみました。

仙台市青葉区荒巻字郷六の産地です。

最近になって危険表示の看板が設置されたようです。看板の後ろが採取地ですが、確かに天井が崩落しそうです。

採取にかかる時間は30〜40分で十分ですが、粘土は現場の小川で洗い流しておいた方が無難です。石英のみ水分を含ませたクッキングペーパーなどで包んでビニルパウチで持ち帰ると楽です。

粘土層ごと採取すると小さいですが無数に石英が採れます。

粘土に含まれる黒光りする粒は鉄類です。半分くらいは磁石にて集められますが、集まらない物もあります。

母岩付き標本にしたい部分は現場で整形して同様に包んでケースに入れて持ち帰ります。

本当に細かいところまで選別すると色々な形が存在します。βタイプだけではないようですね。
今回の成果。これ以外にも分別していない母岩(?)付きが複数在ります。
色々なサイトで書かれているタイプの不透明な石英です。

採取の際には近所の中学生?高校生?が手伝ってくれて助かりました。彼らの話だと瓶詰めいっぱいに持っているそうです。地学教室とかで覚えたのではなく、公園に遊びに来て偶然見つけて(!)遊び場所として通っているのだとか。現在では大きい物以外は集めないそうです。どこぞの先生方よりも偉いです。

 自宅でゆっくりと分類を始めると「何となく」変なことに気が付きます。あちこちのサイトで書かれている不透明なタイプ以外に透明な結晶もあるからです。どこかでは結晶内部の構造に歪みを生じて沢山の亀裂が入ったみたいに説明しているのですが「これは絶対に間違っている気がする!」と直感ですね。

こちらはよく説明されているタイプです。本当に細かく分裂していますので、指先の力でも壊れてしまう個体も在ります。

これだけ見せられていれば前述の説明でも納得する人が多いかも知れませんが・・・

透明度がある個体。小さい個体になるほどひずみの影響が無視できる範囲なのでヒビが入らないみたいに説明されていますが、すこしでも宝石を集めている人が聞けばおかしな話と気付きますね(笑)

これは1.5〜2.0ctsはありますので、宝石好きからすれば大きい部類です。

さて、ここで問題の個体が登場です。かなり分解してしまい(私が破損したのです)可哀相で普通よりよく観察してしまいました。

鋭い方は気付いたと思いますが、結晶の外縁部分だけクラックが集中して白化したように透明度がありません。中心部分はクラックが少ない&透明感があります。

これは透明な部分のみになってしまった個体。

インクルージョンとして鉄類が存在していますし、気泡状の構造も存在します。

実は大きさの大小にかかわらずクラックなどは存在します。小さいと見かけ上わからないだけです。

面白いことに砂粒みたいな石英でも透明感がない物もあります。

当然、綺麗な個体も存在しています。

 今回わざわざ近所のβ石英をとりあげたのは、高温で結晶化するとβ石英と信じられてきたことが間違いのようだ(!)との研究結果が在るみたいだからです。個人的には他産地(特に外国)のβ石英標本は大型でもクラック1つ無いので不思議だったのです。ひずみからの亀裂ならばクリページ程度で済みそうで、本当のところを確認したかったのです。

上で問題の個体として掲載した個体を光源など調整して撮影すると・・・
良く見ると表層付近は結晶のしかたが違います。中心から外へと細長い結晶が成長しているので、核とは成長した環境が違うのでしょう。例えるならば「β石英を核にした水晶のクラスター」ですかね? もしかすると表層は石英でなかったとか、冗談でなかったら笑えません。

 私は鉱物マニアではないので宝石好きの視点で考えてですが、郷六産のβ石英は核が結晶した後に条件が変わって表面近くだけ異なった構造で成長したと思えてしまう。透明感のない石英と透明感のある石英では明らかに見た目だけでなく結晶のしかたが違うからです。地学の偉い先生方がなんで根本的なことを調べてくれないのか不思議ですが、鉱物学ではないからしかたがないのかも知れません。

 最後まで見ていただいた方はご苦労様です。多少間違っていても怒らないでくださいね


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