2006.04.02

気になる中国産のベリル(beryl)

大きめな柱状結晶は

約2cm程度

 最近の標本入手先は中国に遷りだしています。それに伴って入ってくる品物も水晶やフローライトにカルサイト関連が急増したのですが、最近はベリル関連も入るようになりました。そこで気になる中国産ベリルを簡単ですが取り上げます。

 エメラルドはカットしない方が魅力的な気がしますが、世の中そうは簡単ではないです。ルースは確実に必要なのです。

 肝心の話題ですが、黒と白のケースに載せたどちらかが中国産です。謎解きではないのですから答えてしまいますと、白いケースの方がコロンビア産(コスクエス鉱山らしい)です。コロンビア産の特徴としてよく例に挙げられる「カーボン」と「パイライト」が一緒になった標本です。色は申し分ないほど良いのですがサイズがありませんし、インクルージョンにはカーボンが見えます。このカーボンが加工する際にも厄介者です。

 こちらは最近入手してショックだった標本。中国産で湖南省産らしいです。あんまりにも安価に手に入ったので期待はしないでいたのですが・・・結構良いではないですか!

 確かにクラックが多いので全体的に色が褪めてしまっていますが、細かく見れば良いところもあります。カーボンとパイライトはなく、雲母とカルサイトが母岩になります。

 同じく分離結晶の断面です。結構な大きさなので、手の上で転がして楽しめます。

 結晶の成長がスムーズではなかったのか?年輪みたいですね。これが透明度などを悪化させている原因でしょう。

 こちらはさらに別の結晶。良いところから見ればそれなりに綺麗なので、改善処理をされたらどうなるのでしょう?

 大きさを活かしたアクセサリーには適した材料になりそうなのです。


 さらに四川省で採れているらしいのですが、雲母の上に成長しているゴッシェナイト?アクアマリン?です。購入時はアクアマリンとして到着しましたが、何度調べてもカラーレスで平板状の結晶なのです。有名サイトでもアクアマリンとして紹介してます。

 この標本は表側だけではなく裏側も雲母で覆われています。つまり、この写真は雲母の断面側から見ていることになります。

 大きい方の結晶で横方向の長さが1.7cm程度です。

 結晶を横から見ると卓状ではなくて平板状の変わった形です。宝石関連の詳しいWebで紹介されているタイプと似ています。
 大きな方の結晶を良く見ると双晶になっています。さらに結晶の間の面に融蝕みたいな跡もあります。

 この標本もビックリする程安価に入手できました。

 透明度は比較的良好で、後ろの雲母が透けて見えてます。写真では色が付いて見えますが、撮影時背景にあったディスプレイが写り込んだものです。


 ここまで見ていただいた方は薄々感じられたかも知れませんが、中国産のベリルでもう少し品質がよい物が出回り始めると、ブラジル辺りの出始めたエメラルドよりもコストで有利になり駆逐する可能性があります。常に最高品質を求めている世の中ではありませんので、多少トレードオフして流通する可能性が高いのです。

 アクアマリン?ゴッシェナイト?の方も本来は稀少な標本になるタイプがぞろぞろ出るとなれば、今までの価値基準が大幅に崩れる感じです。標本を産地で優劣するコレクターが多いようですが、本来はその物の質と希少性で優劣が付いていく物です。さらに良い品が四川省から供給されれば、ブラジル産の希少性低下は免れないでしょう。


(c)hiros