2006.4.20(2006.4.30追記)

クリアーキャスト

 樹脂に各種結晶原石を封入してアクセサリーを作っています。何度も作ってみて課題になってきたのは、樹脂の透明度以外に「樹脂が無色」であることが重要なことです。それを解決できそうな商品CK-15が入荷してきたので試してみました。

 このウレタン製品のオススメ度を最初に書くと「絶対オススメしません」。用途が違うのです・・・

 こちらは製品になります。(株)アイコムのクリアーキャスト(CK-15)です。コスト的にはポリエステル系と大差はありません。

 購入先では使用実績が無くて、私の使い方のレビューも無いのです。地道にテストするしかないです。

 3個ずつ並べていますが、右のグループがポリエステル系で左のグループがウレタン系です。

 この写真ではよく分からないかも知れませんが、透過光での発色の違いが出ています。

 こちらは従来使用してきたポリエステル系です。地色が黄色っぽいためにキャストできる結晶の色合いが限定されてしまいます。
 こちらはウレタン系です。無色透明は別物に感じるほど色合いの改善をします。特に赤・ピンク系の結晶はスピネルなのですが、上の写真と同じ産地でグレードを使用しています。
 ウレタン系は良いことずくめではありません。全体的に発生している細かい気泡が悩みの種です。この段階では心当たりが多くて(笑)発生の原因が掴めませんでした。

 それでも、このサンプルの頃は泡が少ない方です。

 やはりポリエステル系は安定した製品になってくれます。型抜き後の修正も容易ですし耐久性も抜群です。地色の影響を気にしない原石を選ぶ必要がありますが、販売するとなるとポリエステル系は確実なのです。

 どんなに大きな面積でも安定した硬化と気泡の少なさは、クリアーな製品の絶対条件なのです。

 ポリエステル系の困ったことは地色の問題です。硬化剤をギリギリまで削減してみると黄変しませんが、製品の元々の地色(私の場合は紫)が残ってしまい黄変した方がマシな感じです。

 気泡の原因として当初は真空引きして脱泡する際のミスと考えていました。このミスはポリエステル系でも稀に起きていたからです。原石には微少なクラックなどが多くて、減圧する際に気泡が発生することが確認できていたのです。そこでエメラルドなどは予め減圧〜加圧を繰り返して樹脂を浸透させてからキャストを試みましたが無意味でした。

 原石をキャストする際に減圧すると石の周りに気泡が発生したまま硬化するので、石を入れた場合に真空引きはしない方が賢明です。さらに、ウレタンなどを減圧脱泡するのは良くないとどこかのWebでも記載がありました・・・

 その後、水分の影響が疑わしくなったので脱水処理(電子レンジを使って水分を飛ばす)で対応したのですがこれも効果無しです。

 原石に付着した水分やクラックの空気以外の原因を整理して考え直しながら実験していると、やむを得ない細かい気泡以外の巨大な気泡が突然発生する瞬間を見かけました。ここで気がついたのは部屋の湿度。気泡が大型化したのは換気をして雨の湿った外気が入った後でした。

 いままでは全体的に気泡が発生すると考えていたのですが、現実には内部で細かく発生する泡が上昇するにしたがって大きくなるのです。石が起源ではなくて内部の細かい気泡が石などの埋没材に徐々にまとわりつき、成長する状態も確認できました。この段階で、埋没するタイプの製品にはウレタン系を使えないことが判明したのです。

 そこで、今更ながらに何にも内包しない樹脂だけのキャストをしてみますと「まったく透明」な綺麗な仕上がりです。追加で色々とテストすると、型の内面に突起があると泡が上昇しながら成長してしまうことがあるみたいです。樹脂を混合直後に一気に流し込んだ場合は問題ないのですが、何度か分けて不足分をゆっくり足した場合は境界面から発泡します。故意に容器を何度も入れ替えた樹脂は硬化すると泡で白濁しました。

 一部の型では上手くできていたので型の素材が悪いのでは?と提案があったので検証しましたが、再現テストすると全滅状態でした。型ではないと仮定して石の配置を試すと、型の表面に密着して配置して中心部分は樹脂のみで開放が大きいの場合は泡が見えるところに少なくなるのです。

 型の素材は問題なかったのですが、あまりにも小さい細い型は変形を吸収できないのか?難しい感じでした。

 製品の名誉のために記載すると、型の表面が滑らかで埋没材が無いキャストは比較的綺麗です。物によっては気泡のない製品に仕上がりますが、開封して1週間位すると気泡を抑えられません。湿度が高い場合はウレタンの開封後のライフは極端に短いと考えられます。開封直後は気泡も少なかったので、新鮮なうちは問題が少ないのかも知れません。

 気泡の抜けを良くするために溶剤を添加するテストもしました。一部の溶剤で硬化を遅らせることが可能で気泡の巨大化を防止できましたが、細かい気泡が徐々に発生しているので「炭酸飲料を写真にした」様な製品に仕上がりました。これはこれで綺麗ですが・・・

 結局、別メーカーのウレタンGK−1010を購入しましたが、上記の問題もあるのでエポキシ系を並行して取りよせました。

 今回仕入れたウレタン系の樹脂は希望の光にも見えたのですが、現実には高価な結晶を大量に無駄にする結果になりました。(結晶の損失は約2万円程度)いくらなんでも、個人に販売する樹脂材料としては・・・

原石を投入すると気泡が出ます

(c)hiros